なかつる内科クリニック 晴明町,上京区,京都市 内分泌科・糖尿病科・内科

甲状腺疾患について

甲状腺機能異常について

甲状腺とは首の真ん中にある蝶々型のホルモンを産生する臓器です。
健康診断や献血などの血液検査で甲状腺機能異常に気づくきっかけは、総コレステロール値、LDLコレステロール値です。
甲状腺ホルモンは、肝臓や全身のLDLコレステロール受容体を増やし、HDLへのコレステロールの引き抜きを促進するため、一般血液検査でLDLコレステロールが増加していると、甲状腺機能低下症を疑い、LDLコレステロールが異常に低値だと甲状腺機能亢進症を疑います。

〇バセドウ病

若い女性に多く、人口1000人当たり約5人と推測されています。自己免疫の異常で(Ⅴ型アレルギー)、甲状腺を刺激する自己抗体が出現すると、ホルモン値が上昇を続けるバセドウ病を発症します。症状は、甲状腺腫大、頻脈、眼球突出がメルセブルグの3徴で有名です。その他に暑がり・発汗過多・動悸・手の震え・無月経などがみられます。
確定診断は血液検査で甲状腺ホルモンが高いこと(TSH↓T3・T4↑)、抗TSH受容体抗体を確認すること、シンチグラフィー検査、エコー検査で他の疾患(プランマー病などの機能性甲状腺腫瘍)を除外することです。バセドウ病は放置すると、長期的には、心血管疾患、糖尿病、精神疾患の原因となり、生命予後に悪影響があります。 治療法は、日本では内服薬(メルカゾール、チウラジール)が主流です。副作用はありながらも、注意して使うと簡便で、調整可能なため、70年間以上これに代わる治療薬は出ておりません。放射性ヨード内用療法は、カプセルの放射性ヨード剤を内服するのみで、アメリカでは第一選択の治療法です。一度の治療で済む反面、眼球突出を悪化させる可能性があり、甲状腺機能低下症に移行する可能性は高いです。手術療法は、早期治療を希望される方、甲状腺自己抗体が高く難治性・眼症・薬剤アレルギーの時に有効な治療法です。反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症など手術に伴う影響があることと、術後に甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモンの補充療法が必要となります。

〇橋本病

1912年に橋本築博士の甲状腺炎の病理学的な報告が疾患名の由来です。甲状腺を破壊する自己抗体が出現し、ホルモン値が低下する疾患です。
診断は、甲状腺機能にかかわらず、甲状腺自己抗体(Tg抗体、TPO抗体)が陽性であること、エコー検査にて甲状腺のびまん性腫大、血流亢進がみられることが挙げられますが、健康診断で自己抗体陽性の方は、女性では10%以上(男性でも7~8%)あり、甲状腺機能低下症は1000人当たり約15人といわれています。症状は、甲状腺腫大、寒がり・むくみやすい・脈がゆっくり・脱力・無気力・月経不順などです。 甲状腺機能が低下していれば、T4製剤を補充します。(橋本病の根治療法はありません)

〇亜急性甲状腺炎

自然軽快するため、報告されることが少なく、発症頻度は不明ですが、中年女性に多く、甲状腺疾患の5%程度といわれます。先行する風邪などの上気道炎症状に続いて、1~2週間後に前頚部の痛み、頚部の腫れと、一過性にバセドウ病のような甲状腺中毒症症状が出現します。
診断は、エコー検査にて圧痛部分に一致した低エコー領域がしばしば移動します。血液検査では炎症所見(CRP上昇、赤沈亢進)、甲状腺機能高値(TSH↓T4↑)を認めます。
治療方法は、軽症の場合は、消炎鎮痛剤です。痛みがひどい場合、長引く場合は、ステロイドを内服することがあります。甲状腺中毒症状には、抗不整脈薬などで、対症療法をおこないます。

〇無痛性甲状腺炎

橋本病の経過中に発生する一時的な甲状腺中毒症です。出産後3~4ヶ月目や、バセドウ病の寛解期に、動悸や発汗、体重減少が現れ、血液検査で甲状腺ホルモン値が高値となるため、バセドウ病と間違われることがあります。診断は、甲状腺機能高値の時における、抗TSH受容体抗体陰性、シンチグラフィーでの甲状腺摂取率低値です。

〇急性化膿性甲状腺炎

甲状腺に痛みを伴う炎症性疾患で、細菌や真菌感染症です。正常であれば、甲状腺は皮膚や食道、気管からの交通がないため、感染症が起きることはないのですが、下咽頭部の梨状窩瘻を通じて、甲状腺に異物が流れ込み、炎症を起こします。
先天性の形態異常が原因のため、20歳未満に多い疾患です。

〇甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍は、殆んどがホルモンを産生しない腫瘍です。良性の濾胞腺腫・悪性の乳頭癌・濾胞癌・未分化癌・髄様癌・甲状腺悪性リンパ腫があります。ホルモンを産生するタイプの腫瘍をプランマー病といいます。 当院では、甲状腺エコー検査と、穿刺吸引細胞診で診断、経過観察が可能です。

甲状腺 甲状腺