なかつる内科クリニック 晴明町,上京区,京都市 内分泌科・糖尿病科・内科

糖尿病について

糖尿病について

糖尿病とは、血液中の糖分(血糖値)が高い状態が続き、血管や体の細胞がダメージを受ける病気です。原因は、(膵臓・肝臓・筋肉・脂肪細胞における)膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンの作用不足です。これには遺伝因子と環境因子が関与しています。

2型糖尿病

2型糖尿病発症の環境因子は、加齢による変化のほか、高脂肪食、高カロリー、アルコール過飲、喫煙、運動不足などの生活習慣があります。
若い頃の体重よりも20%以上増加すると、10年以内に約85%の方が糖尿病を発症するとの報告があります。皮下脂肪よりも内臓脂肪がインスリン抵抗性を上げ、糖尿病を引き起こしやすいです。遺伝因子は、濃厚な家族歴のあるMODY(maturity-onset diabetes of the young)の他に、過去の遺伝子解析によって、糖尿病患者さんの約2割に遺伝子多型のKCNQ1がみられることがわかっており(これらの遺伝子診断は一般的ではありませんが)家系に糖尿病がおられる方は、通常よりも糖尿病を発症する可能性が高いと考えられます。
その他、アルコール過飲による膵機能低下、膵癌や自己免疫性膵炎、ステロイドや成長ホルモンが過剰分泌される内分泌疾患、ブドウ糖を取り込む肝臓に疾患がある場合、薬剤性、自己免疫性(多腺性内分泌症候群)、感染症でも糖尿病が誘発されます。
中等度のアルコール(1日46gのアルコール)については、報告はまちまちで、中等度のアルコール摂取は健康によい・・・とは言い切れません。
喫煙は、インスリン抵抗性を増すことが、過去の研究で報告されております。一方、喫煙は食欲抑制ホルモンのレプチンの血中濃度が増加しています。禁煙すると、一時的に体重が増加してしまいますが、それでもたばこは有害なので、禁煙をおすすめいたします。

1型糖尿病

1型糖尿病は、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞が自己免疫性に破壊されることによっておこる糖尿病です。日本では全糖尿病患者1200万人の約1~2%と少なく、イタリア、フィンランドなどの北欧では日本の20倍以上です。1型糖尿病に強く関与するのは、免疫に関わるHLA(human leukocyte antigen)が特定の型であることが関係しますが、必ずしも全員ではなく、一卵性双生児での発症一致率は30~50%です。主要な自己抗体で測定可能なものは抗GAD抗体、IA-2抗体です。発症時は陽性率約80%ですが、10年経過すると約20%に低下します。2型糖尿病と診断された方でこれらの抗体が陽性の場合は、緩徐に進行する1型糖尿病の可能性があり、インスリン治療が必要になってくる場合があります。反対に、自己免疫が関与しない特発性(非免疫性)1型糖尿病も存在しており、β細胞の増殖・再生に関わる遺伝子の何らかの異常である可能性が考えられております。

糖尿病の治療

短期的には高血糖の症状、体重減少や感染症がありますが、ほとんど無症状で経過するため、慢性合併症が問題となります。早朝空腹時血糖値126mg/dl、随時血糖200mg/dl以上、糖負荷検査で2時間値200mg/dl以上、HbA1c6.5%以上を糖尿病型と診断し、食事・運動・その他の疾患の管理(血圧・脂質異常)をおこない、経過観察をおこないます。HbA1cが改善しないようなら、病態に応じた経口血糖降下薬、皮下注射薬を開始します。目安は、HbA1c7.0%を維持することですが、年齢や低血糖の危険を考えて緩いコントロールを目指すこともあります。
1型糖尿病では、インスリン治療が必須となります。

糖尿病の食事について

⦿2型糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法です。
食事療法ではまず、適正なエネルギー量の食事をすることが大切です。年齢や性別、身長、体重、運動量などによっては違います。特に炭水化物の多い食品の食べすぎには注意してください。ごはんを食べる場合は一度量ってみましょう。


⦿一日当たりに必要なエネルギー量を、3食にほぼ均等に振り分けることも大切です。1日1食や2食などのまとめ食いをすると、一度の食事で過剰にエネルギーを取り込んでしまいます。また、つい食べすぎたり、早食いになってしまったりして、脂肪を溜め込みやすい体になりやすいです。1日3食、出来るだけ毎日同じタイミングで規則正しく食べましょう。

<一日に必要なエネルギー量を計算してみましょう>
➀BMIで肥満度をチェック
BMI=体重(㎏)÷[身長(m)×身長(m)]

②標準体重は?
標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22

③適正な摂取エネルギー量は?
適正摂取エネルギー量(kcal)=標準体重(㎏)×身体活動量(kcal/㎏)

★身体活動量(kcal/㎏)
低い(軽い労作)  25~30kcal/㎏
普通(普通の労作) 30~35kcal/㎏
高い(重い労作)  35~kcal/㎏

 

⦿糖尿病は進行すると血管に負担がかかり、動脈硬化を招く恐れがあります。血管に負担をかけないためには、高血糖状態を持続させないことの他に、血糖値の急上昇を防ぐことも重要です。

<血糖値を急激に上昇させないための食事のポイント>
➀ゆっくりとよく噛んで食べ、早食いをしない
人間の脳にある満腹中枢は、食事を始めてから約15~20分後に働き始めると言われています。満腹感を感じる前に食事を終えてしまうと物足りなさを感じるので、つい食べすぎてしまいがちです。また、一度にたくさんの糖質が消化・吸収されて血糖値が急上昇します。そのため、よく噛んでゆっくり食事をすることが、過食による肥満や、血糖値の急上昇を防ぐことにつながります。

②野菜から順に食べる
ごはんなどに多く含まれる炭水化物を食べる前に野菜を食べると、野菜に含まれる食物繊維が糖質、脂質、コレステロールなどの消化・吸収を遅らせて、血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。また、炭水化物を食べる前に野菜を食べることで、インスリンの分泌を促進する「インクレチン」というホルモンの分泌も促されます。インクレチンは、満腹感を持続させたり、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。ご飯を食べるときにおかずが欲しいようなら、野菜やおかずを少し残すとよいですよ。

③GI値の低いものを選ぶ
血糖値の上昇の程度の指標となる「GI」(Glycemic Index:グライセミックインデックス)の値が低い食品ほど血糖値の上昇は緩やかです。GI値とは、食品が消化されて食後2時間までの間にどのくらい血糖を上げるかを数値化したもので、「血糖上昇指数」とも呼ばれています。GI値は原則として、糖質の量が少なく、食物繊維の量が多いものが低くなる傾向があります。ごはんを選ぶときは、精製度の高い白ご飯よりも、精製度の低い玄米ご飯の方がGI値は低くなります。また、パンの場合は、精製された小麦粉が主原料の食パンよりも、食物繊維の豊富なライ麦パンの方が低GIです。

【白ご飯:GI 84】   【玄米ご飯:GI56】
     
【食パン:GI91】   【 ライ麦パン:GI 58】


オススメの低GI食品は、青菜やきのこ類、海藻類、こんにゃく、キャベツ、もやしなどです。特に、きのこ類や海藻類に多く含まれている水溶性の食物繊維は、胃の中の糖をからめとり、血糖値の急上昇を抑える働きがあるだけでなく、コレステロールを体外に排出するのを促す効果もあります。GI値が60以下のものを目安に選ぶとよいでしょう。

⦿栄養バランスの良い食事をすることも大切です。エネルギー量が適正でも、栄養バランスが悪いと体脂肪が蓄積し肥満にもつながります。肥満の状態では脂肪細胞からインスリンの効きを悪くする成分が分泌されるので血糖値が下がりにくくなってしまいます。また、タンパク質も摂りすぎはよくありませんが、不足すると筋力が低下して基礎代謝が下がり、痩せにくくなってしまうので、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を意識して取り入れましょう。その他にも、豚肉やうなぎ、レバー、玄米、木綿豆腐、納豆などに多く含まれるビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるのに欠かせない成分です。エネルギーに変わらず余った糖質は中性脂肪に作り変えられて内臓脂肪として蓄積されますので、代謝効率を上げて肥満を防止するためにもビタミンB1も意識して取り入れましょう。
基礎代謝を向上させるためには筋肉トレーニングを行うことも効果的です。これに加えて有酸素運動とストレッチングを組み合わせると、運動による血糖値コントロールの効果が上がるので、無理のない範囲で日常生活に取り入れるようにしましょう。


【ビタミンB1の豊富な食材】